「私、あなたが思ってるような人間じゃない」│[小説]けむたい後輩/柚木麻子さん
いつだっただろう、芸能人の方だか誰だったかがおすすめしていたので購入。
けむたい後輩/柚木 麻子さん
けむたい後輩/柚木 麻子さん
柚木さんの作品だと、『ランチのアッコちゃん』や『本屋さんのダイアナ』の方が有名でしょうか。2012年に発売されて、今は文庫になっている小説です。
あらすじ
あらすじ
大学で元詩人の先輩・栞子に出会い、心酔していく真実子。親友を栞子に取られたようで美里は面白くない。一方、栞子の恋人・蓮見教授は美里の美貌に心を奪われて―。女子大で入り交じる、三者三様のプライドとコンプレックス。 (Amazonより)
「甘えんじゃねえよ」と言われた気がした
主人公は大学生。そんな親近感も手伝って、買った次の日に一気に読んだ。
私の脳がそういう方向にひっぱられがちだからかもしれないけれど、小説的な部分以上に、自己啓発的なメッセージが色濃く出された作品だと感じた。
この本は私に「甘えんじゃねえよ」と言っているようだった。
病弱で、生まれながらのディスアドバンテージを持っているけれど、何事もまっすぐ頑張って、すぐに物事を習得してしまう子。
恵まれた容姿を持ちながらも男性関係だけは不得意。持って生まれたアドバンテージに甘んずることなく夢に向かってひたむきな子。
若くして「小さな成功」を掴んでしまったばかりに、過去から脱却することができず、ぬるみきったお湯から立ち上がることができない子。
3人の人間関係が絡まり合ってストーリーは進む。
「頑張りたいけど頑張れないなら、人生はそこで終わり」
「できないんじゃなくて、やらなかったの」
「負けなくないから勝負しないだけ」
「捨て身の努力ができないくせに何を偉そうに」
「平凡だけどそれなりの幸せ、目の前の幸せがある人生か、苦難はあっても自己実現できる人生か、どちらを選ぶのか」
こういった趣旨のフレーズがバンバンでてくる。
女の子たちの成長物語、とも表現できる小説だろうが、私には作者からの叱咤激励が込められた作品であるとしか感じられなかった。
自分に自信がある人には小気味よく、そうでない人には残酷なストーリー
ストーリーは非常に面白い。
心に残る小説であることは間違いなく、読んでよかったと思える作品だった。
しかしながら、ネットでレビューを見ると、スカッとしたとか、痛快だとかいう感想が多くて驚いた。
私にとっては、成功者にあざ笑われているような、上から見下されたような気持ちに突き落としてくれる小説だ。
きっと、自分に自信がある人にとっては小気味よく、スカッとする小説だろう。
そして、私のように自分の生き方に引け目を感じている人にとっては、登場人物たちに横目で睨みつけられたような気持ちが残るだろう。
ビリビリ胸が痛むことは間違いないが、前に進まないと、頑張らないと、という、(ややもすれば恐怖に近い)前向きな感情が生まれることは保証する。
ストーリー展開もいい意味で分かりやすく、メッセージ性も強いので、小説って何がいいたいかわからないから苦手、という方にも読みやすそうな一冊だ。
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