"愛"はいつだって難しい。【感想】四月になれば彼女は/川村元気さん

大ヒット映画「君の名は。」のプロデューサーということで、最近特にメディアでも良くお見かけする、川村元気さんの新作恋愛小説です。本当は、発売後に即買って読んだんですが、結局レビューするのはこんなに後になってしまった…!

結論から言うと、私はとってもとっても好きでした!

愛とか恋とかちょっとでもブツブツ考えたことのある方は面白いんじゃないかな、と思います。

あらすじ

4月、はじめて付き合った彼女から手紙が届いた。
そのとき僕は結婚を決めていた。愛しているのかわからない人と――。
天空の鏡・ウユニ塩湖にある塩のホテルで書かれたそれには、恋の瑞々しいはじまりとともに、二人が付き合っていた頃の記憶が綴られていた。
ある事件をきっかけに別れてしまった彼女は、なぜ今になって手紙を書いてきたのか。時を同じくして、1年後に結婚をひかえている婚約者、彼女の妹、職場の同僚の恋模様にも、劇的な変化がおとずれる。
愛している、愛されている。そのことを確認したいと切実に願う。けれどなぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去っていってしまうのか――。
失った恋に翻弄される12カ月がはじまる。



以下、引用ベースなので、若干ネタバレを含みます。(といっても、そんなにネタバレしてないので、絶対ネタバレ嫌!という方以外はぜひ。)


「誰かを愛し、誰かから愛される人生を諦められなかった」最後に母は、微笑んだ。「私の人生はまだ二十年も残っているんだから」 (p.60)

これは、物語の筋とはそんなに関係なくて、主人公のお母さんが離婚を決意した時のセリフなのですが、個人的にかなり印象に残りました。私のことよく知っている方は、私が「愛!」みたいに日常的に叫んでいることをご存知かもしれませんが、私とかめちゃめちゃ人に愛されたいと思って生きてるんですよね。笑

でも、「愛されること」って相手の問題だったりするから、結構諦めちゃう。これ、お母さん60歳とかの設定なんですが、絶対60歳で愛されて無くても諦めちゃうなって思ったんですよ。でもこの人は諦めて無くて。私なんて今でも諦めてしまいそうだったんですが笑、「愛される人生を送ること」を諦めずに生きていこうと決意しました。

「私は愛されない」とか、「私は◯◯されない」「◯◯できない」って、ちょっと何回か似たようなことが続くだけで、本当に簡単に信じちゃうんですよね。2,3回成功しても全然自分のこと信じないのに、2,3回失敗したらすぐ信じ込んじゃう。こういうクセってある程度人類共通だって思っているんですが、自分のこと「できない」って思い込むのは控えていきたいものです。


「愛情といえばなにもかもがゆるされるのが嫌なんですよ。愛し合うふたりは無条件で美しくて素晴らしいものだという感じが。愛情って、もっと無様で孤独なものだと思うから」(p.97)

これもすごく分かるな〜〜って思いました。

「愛」って、なんでも仕事引き受けてくれるんですよ。「愛があれば」「Love is 〜〜」みたいなこと意外と軽く人は言っちゃうし、どんなことも愛のせいにしておけば話まとまっちゃう感あるんですが、愛は仕事引き受けるだけで全然仕事やり遂げてくれないですからね!なんでも愛でまとめていい話っぽくするの反対!


「五年前に精神的に壊れた俺を彼女は助けてくれた。俺が生きていくうえで、なにが必要で、なにが不必要か彼女はすべてわかってくれている」
「でも、これだけわかり合えていても、妻のことをいま愛しているかどうかわからないんだ。とても大切で、一緒にいるべき人なんだ。けれどもときどき、俺たちの夫婦関係をつないでいるものが、ただのこだわりでしかない気がして、すごく怖くなるんだ」(p.139)

必要だったり、大事ではあるけど、愛しているのかわからないってやつですね。23歳だから全然どっちが正しいのかわからないけど。


「一緒にいる人のことを信じるのは難しいですよね」
「誰かの気を引こうとするときには、人はどこまでも優しく魅力的になれるんです。でもそれは一時的なものでしかない。手に入れたあとは、表面的で無責任な優しさに変わってしまう」
「ほとんどの人の目的は愛されることであって、自分から愛することじゃないんですよ」

「それに、相手の気持ちにちょっとでも欠けているところがあると、愛情が足りない証拠だと思い込む。男子も女性も、自分の優しい行動や異性に気に入られたいという願望を、本物の愛と混同しているんです」(p.207)

これも、多くの人にとって心当たりしか無いのでは。

恋愛はワインみたいなもの、という説が私はすごく好きなんですが、ヴィンテージのワインの味がどんどん変わっていくのと同じように、恋人とか夫婦の関係も、時間が経つと絶対に変わっていくんですよね。ワインは味が変わることを期待して長く保存しているのに、人間関係だと全然そう考えない人が多い。

"今この瞬間がずっと続く"と思うと関係は壊れてしまう。だから、関係が変わっていくのを楽しむ、という姿勢が大事で、ずっと同じ味、ずっと同じ関係を期待する人は単なるバカだって、私の好きな学者が言ってました。笑


「それは“正解”なのかもしれないですけど、絶対的に悩んでいる彼女を救うことはできません」(p.214)

まじで、人生のIF関数は絶対に複数条件なんですよ!なんなら30個くらいの複数条件。

あなたの中ではTRUEでも、全然こっちはFALSE返してたりしますからね!特大のFALSEを!それで答えが合わない時に、自分の意見を全然疑わないで、Excelが壊れてるみたいな言い方する人いるでしょ。それはExcelが壊れてるんじゃなくて、君のIF文が間違ってるんだよ!!みたいな。みたいな。みたいな。笑

正解を探すのか、相手を救う方法を探すのか。どちらも間違ってはいないけど。

「正論は正しい。だが、正論を武器にするのは正しくない。」 って図書館戦争で堂上教官が言っていたことをふと思い出しました。このフレーズも大好き。


「私たちは愛することをさぼった。面倒くさがった。些細な気持を積み重ね、重ね合わせていくことをさぼった。」(p.221)

インタビューとかでもよく触れられてるフレーズです。説明するまでもなく、響きまくります!


そんなに長くもなくて、気持ちよくスイスイ読み進められる小説だと思うので、気になった方はぜひ。

私は、著者インタビューとか制作の経緯の話を聞いて、興味を持って読んだので、川村さんのインタビューもぜひ読んでみて下さい。いっぱいネットにもあがっていますが、ボリュームがあっておすすめのやつ2つのリンクがこちら↓

川村元気インタビュー「先に愛した人が、甘い果実を手に入れる」(Numero Tokyo)

恋愛なき時代に、恋愛小説に挑んだ 川村元気さんが新刊(朝日新聞デジタル)

余談ですが、

今、隣に愛すべき人、もしくは愛している人がいる人には読んでもらいたいなと思います。

こんなセリフをいつかどこかで言えるような人生にしたいと思いました。笑

おしゃべりはオンラインで。

色んな人に会いたいけど、なかなか全員には会えないので。 Web系女子の端くれとして、オンラインで勝手におしゃべりすることにしました。

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